創業したばかりの会社はどうやって立派な会社になるのだろう?

はじまり

創業したばかりの会社はどうやって立派な会社になるのだろう?
これは18年前、私がベンチャーキャピタルの駆け出しの時に抱いた大きな疑問でした。長い間、その解を見つけるために仕事をしてきました。

1996年にベンチャーキャピタルの仕事に就きました。当時はインターネットも普及しておらず、ベンチャー企業が急成長できる環境がありませんでした。そして上場には経常利益が最低でも3億円が必要な時代。つまり創業から上場まで平均30年かかる時代だったのです。

だから米国VCのような仕事はできず、利益の出ている中堅企業に「これから5年で上場を目指しませんか?」と言って、増資勧奨していました。蔑んだ言い方をすれば、VCではなく、未上場株式の仕入れ・販売のような仕事でした。

転機

2000年になり、東証マザーズ、NASDAQ JAPANという成長性があれば赤字でも上場できる証券市場ができました。この市場創設はベンチャー企業だけでなくVCにも大きな転機をもたらしました。インターネットが普及期に入り、創業5年で上場できる素地ができたのです。いよいよ創業間もない会社にも投資できる環境が整い、VCらしい仕事ができる!

私は1999年から主にインターネットビジネスにフォーカスしていて、2000年以降、ネット関連の創業間もない企業への投資にのめり込みました。毎月投資先の経営者に会って会社の施策や進捗を教えてもらい、今後の取組についていろいろと議論させてもらいました。

よく、ベンチャーキャピタリストはベンチャー企業を育成する立場、と言われますが、私は起業家を通してベンチャー企業の経営を学びました。つまり起業家に育成してもらったわけです。

1999年から2009年までの10年間、20社を超えるベンチャー企業で、上場した会社、失敗した会社、危機的状況に陥った会社、V字回復した会社と、長期間に渡り様々な企業の経営現場に立ち会うことができたました。いいM&AもよくないM&Aも。「なるほどこうして企業は成長するのだ」、「なるほどこれだとダメなんだ」。この10年間の試行錯誤と経験は非常に大きな収穫となりました。

課題

しかし、全ての解が見つかったわけではありません。社外取締役になり起業家とかなり近い距離感だった会社が何社もありましたが、それでも起業家と投資家の間には、ほんのわずかですが、どうしても埋まらない細い溝があることがわかりました。やはり、会社と株主という関係なので、起業家も気を使うわけです。

これを解消するべく、2009年にVCを辞めて独立し、ベンチャー企業のCFOの仕事を複数社・同時並行でやってきました。この時から起業家と私の間の溝は消えました。社員ともフランクに接することができます。会社の本質的課題もよく見えるようになりました。

成果

おかげで独立後今日までたくさんの企業の実務をやらせて頂きました。VCのようによさそうな会社を選ぶことはなく、ご縁を大切にしてきました。関わった会社をいかに成長させるか?その1点を目指して仕事をしています。そして、いろいろなことが新たに見えました。

しかし、企業成長に魔法の杖がないこともわかりました。起業家の持ち味も千差万別です。ベンチャー経営は刹那刹那で最適解を考えて判断する連続で成り立ちます。正解などわかりません。自分たちが下した判断を、正解にするために事業を進めるのが経営チームの仕事です。

ただ、成長企業をつくるためのポイントや、陥ってはいけない罠は体系化することができます。

今後記載することの目的

私の思いは、成功するベンチャー企業がもっともっと増えることです。日本では起業する人がまだまだ少ないです。これはひとえに、成功するベンチャー企業が少ないからです。それであれば、成功確率を高めれば、起業する人も増えるはずです。

もし自らの進化と向上を目指すのであれば、私は起業というのは、人間性とビジネス能力を最も高める仕事の1つだと思います。少なくとも命を取られることはありません。起業家の成功が増えることは、日本の経済を底上げし、悲観を期待に変える原動力になります。

このような思いから、今後もnoteで記載させて頂きたいと思っています。