スタートアップ立国・日本はあり得るんじゃないか説
コロナ以前から日本の経済成長はイマイチな状況が続いていると言われています。確かに主要な指標を見ると、残念ながらその事実を認めざるを得ません。
では、もし日本が持続的にイイ感じに経済成長する時がくるとしたら、どんな状況が想像できるでしょうか?
私は想うのは、今よりもずっとたくさんのスタートアップが生まれ、大きく発展している姿です。
引き続き大きな会社がGDPの大きなウェイトを締めますが、スタートアップが成長率を牽引している世の中をイメージします。
つまり「スタートアップ立国」に向かう姿です。
現状をデータで見る
まず最初に、日本が現在、世界の国々に比べてどんな状況にあるかをざっくり見てみましょう。数字は簡素化するため、US$=100円で計算しています。
まずは主な国々のGDPの金額。
日本は世界第3位のGDP。でも成長率は・・・
主要国の中で唯一、1%を割っています。
1%くらいの差なんて、大したことないように思いますが、これが10年続くと日本の場合、60兆円の開きがでてきます。日本の自動車産業の市場規模が約60兆円と言われていますので、大きな差ですね。
次に一人あたりGDPのランキングです。
日本は2018年現在、世界で26位。
ただ、たとえばルクセンブルク(人口60万人)は、近隣のヨーロッパ諸国からの移民が約45%で、金融が全産業の約25%を占める国です。
スイス(人口800万人)は物価が高く、たとえばマクドナルドのビッグマックが700円を超えるなど、日本の約2倍の値段です。
住んでいる方々の実質的なゆとりは日本とそれほど大きく乖離していないかもしれません。
ただここでは、現在、日本が経済力を高められていないという事実を知っておきたいと思います。
なぜ経済力が必要なの?
「経済力を高められないと何が悪いの?経済力が弱くても幸せに生きることはできるだろ。」
幸福度が高いと言われるブータンよろしく、確かにこの考え方はあります。
しかし、私は精神的なゆとりや豊かさ、国や街が活力を得るには、ある程度経済力が必要だと考えます。
歴史の教科書に出てくる楽市楽座のように、活気ある街づくりは、経済が1つの起点になっているという事実があります。
それで、これからどうしたらよいの?
でも、誰か偉い指導者が「日本のGDPをもっと上げろ!」と声高に叫んだところで、私たちがそれに奮い立つようなことはないのかな?と思います。個人の日常からはちょっと目標が遠過ぎて、日々のモチベーションにつながりにくいです。
そこで、「働く方々が、もっと楽しく・やりがいをもって仕事をすることで、気がついたら経済成長していた」となるのはどうでしょうか?
GDP成長率をノルマ化してもおもしろくなそうです。
逆に、みんなでやりがいを感じながら自律的に仕事をしていたら良い結果がついてきた。
こんな姿を目指すのもアリかな?と思います。
つまり、GDP成長の課題には、夢中になれる環境や幸せな働き方にあるのかもしれません。
大きな会社の働く環境
日本では、就労人口5,000万人のうち、大企業で働いている方が1,500万人います。丁度30%くらいです。
大企業には優秀な方々がたくさんいますが、働く方々が皆、本来の力を発揮できているかというと、私の知り合いを俯瞰してみても、そうでない気がします。
大企業で働くよさは、なんといっても収入の安定性です。多くの大企業は半年後に倒産することはないでしょう。逆の見方をすると、生き残るために、時間を争ってイノベーションを起こす必要性が高くないのかもしれません。
組織に目を向けると、役職という縦の関係性で動かしたり、本人の意志とは関係なく人事異動になったりします。これらも、大きな組織を運営する上で必要だからだと思いますが、結果的には働き手にとって、理不尽なことを飲み込んだり、少し窮屈に感じたりすることがあるかもしれません。
スタートアップの働く環境
スタートアップは、革新的なプロダクトを世に放ち、それが絶賛受け入れられるようにすること、つまり、プロダクトイノベーションを通じて世の中をアップデートしてゆくことが唯一の活路です。
大樹のないところで新しいチャレンジをするので、大企業に比べ安定性は低いです。しかし、生き生きと働いている方が多いです。思いつく理由としては、
・自分が好きなことをやれる。
・規則・ルール・決裁階層が少ない。
・理不尽なことが少ない。
なぜ、スタートアップがこのような環境かと言うと、
・成果を挙げてもらうには、最も力が出る環境が必要がある。
・意思決定には、役職に関係なく価値ある意見が重要となる。
・理不尽なことが多いと成果が生まれず、会社が立ち行かなくなる。
限られた資金で最大の効果を狙わざるを得ない状況です。
つまり、スタートアップの置かれた環境の中で、存続と成長を実現するためには、「はたらきやすさ」が必要条件なのだと思います。
一方、成長スタートアップは、規模が大きくなって、大企業あるあるに近づいてゆくのでは?という懸念があります。
規模が大きくなったスタートアップの中には、これに直面して苦労している会社もあるでしょうし、そうならないように努めている会社もあるでしょう。
しかしマクロで考えれば、もしそうなったとしたら、そこを離れてまた新しいスタートアップが誕生する、というサイクルになると考えます。
ビジネス環境はスタートアップ向けになりつつある。
そして、世の中はスタートアップが成長しやすい土壌になってきていると感じます。
以下はその一例です。
プロモーションコストの低下
一昔前は、スタートアップが自社や自社のプロダクトを知ってもらう方法は極めて限られていました。ですから「どうやって知られるのか?」ということは重大なテーマでした。
もちろん今でも重要なテーマではありますが、SNSや情報発信によって、優れたプロダクトがあれば、世の中に知られるハードルは相当下がったと思います。プロモーションの資金的なハードルもしかりです。よって、昔は営業組織やマーケティング力が非常に重要だったわけですが、現在はプロダクト力がより重要になってきていると感じます。
フリーミアムモデル
プロダクトを無償でリリースし、利用者の反応を見ながらプロダクトをカイゼンしながら運営することが可能になりました。
そして、投資家のこのモデルに対する理解が進みました。
一昔前は、ハードウェアやパッケージソフトをつくりきってから世の中に放つのが当たり前でしたが、現在はプロダクトをリリースしてから改良を加えられるようになりました。
つまり、リリース前に完璧なプロダクトを仕上げる力よりも、いかにカイゼンをスピーディーに回せるか、すなわち、試行錯誤をスピーディーに回せる力が勝負になってきています。
サブスクリプション
フリーミアムでスタートして、利用者の反応がポジティブになってきたら有料サービス・有料オプションをおすすめしてゆくことがスタンダードになっています。
最初に大きな販売代金を請求するのではなく月額の利用料を頂く。これは、利用者の検討負荷と利用コストを劇的に下げました。使えなかったら解約すればいい。企業が利用する場合も社内決裁ハードルが下がったと思います。
これによって、スタートアップがプロダクト提供しやすくなり、継続カイゼン+アップグレードを図ることで、利用者の継続利用に努めることができます。
利用者が継続利用してくれれば収益基盤が固くなる。
ちなみに、昔は年度が終わると、新しい年度はいつも売上ゼロからスタートするという、しんどい状況でしたが、サブスクはそういう難しさを消し去ってくれます。
プロダクト勝負の時代
試行錯誤をいかにスピーディーに回すかが勝負の時代になってきたことで、組織規模では劣るスタートアップも、一点突破のプロダクト勝負となると強いです。
このように世の中は、スタートアップが活躍できる環境に変化しています。
現在は、ものが溢れ、かつ、ものづくりの主軸が日本以外のアジアやアフリカ各国に移っています。
その一方で、テクノロジーを使ったサービスで、「え?こんなことができるの?」ということが増えてきました。
会社の大小を問わず、主戦場がクリエイティブとテクノロジーになってきたわけですから、スタートアップ立国に向かってゆくのが自然だな、と思ったのでした。