スタートアップの資金調達 時価総額はどうやって決まるのだろう?

コンビニ、レストラン、アパレルショップ、、、お店の商品には値段がついています。
上場会社は株式相場というものがあって、それが売買の目安になります。
では、未上場のスタートアップの値段、つまり時価総額はどうでしょう?
値札もついていませんし、毎日の相場もありません。

スタートアップの時価総額は、絵画や骨董品と少し似ていて、株式の売り手である会社と、買い手である投資家とで話し合って決まってゆきます。

ものすごく雑に言うと、
売り手の「時価総額は○億円でどう?」に対して、買い手が「オッケー」だと成立、「うーん、ちょっと高いね」だと交渉が続くか、会社は別の投資家と話します。

でも、足場がないところに立てないのと同じく、なにかスタートラインがないと、いくらぐらいを主張してよいか、わからないですよね。

プロの投資家さんは、スタートアップの創業期から上場準備期まで、いろんなステージによって、おおよその相場感を持っています。

おおよその相場観からスタートして、いろんなことが足し引きされて決まってゆきます。

例えば、

・創業直後、サービス構築中の会社 3,000万円調達で時価総額3億円、
・サービスイン直後 3億円の調達で時価総額13億円

この成立には、事業構想、未来の事業規模、起業家の過去の経験、人柄、チームメンバーの経験、プロダクト構想、顧客の洞察、業界の洞察、会社の希少性、KPIの推移、売上の状況、資金の状況、競合他社の存在、株主構成、その時々の証券市況・・・などなど、いろんな要素が足し引きされています。

これは、ロジックや査定表で金額を導き出すというより、感性で決まってゆくのが現実です。

では、感性に大きく影響するものって、何なのでしょうか?

それは「構想の魅力」と「実現可能性」でしょう。

構想の魅力
「おおっ!なるほど!」、「こんなアイデア聞いたことがないぞ!」
起業家が描く将来の構想が、大きくて意義のあるものだと、魅力も大きくなります。話を聞いて、上場時に時価総額が1000億円を目指せるぞ!と思うことがあります。

投資家さんは会社の未来を保守的に考えるかもしれません。投資先が想定通りにいかないことが多いですから、経験則的にコンサバになることは理解できます。でも、魅力的な構想に出会うと、「ひょっとして?」と感じることもあると思います。

実際、私の関わるスタートアップの構想というのは、大きくて本当におもしろいです。年月を経てもワクワクが変わりません。

私たちは将来、
・どれくらいの数のお客さんに、
・どれくらい喜んでもらえるのか?
この掛け算の答えの大きさが、事業構想の大きさなのでしょう。

それが年間の売上にすると、10億円なのか、100億円なのか、1,000億円なのか、1兆円なのか、ですね。

実現可能性
魅力的な構想も、本当に実現できるのかどうか?によって期待度が変わりますよね。すでにKPIが伸びていたり、顧客からの支持の声が大きかったり、実際に売上が勢いよくのびていれば実現可能性を感じやすくなります。事実は何よりも説得力があります。

ただ、多くのスタートアップは実績が乏しいです。なのでこの段階では値踏みされやすいんのですが、別の観点から投資家さんが実現可能性を感じることはできます。

それは、起業家をはじめとしたメンバーです。「こういう経験値を持っていればできるんじゃないか?」、「この人ならやれそうだぞ」、「このチームであれば実現できるかもしれない」。こういう推測はできます。

事業構想の大きさと、実現可能性のあるメンバー。

この2つの要素が、未来への魅力を感じさせる、重要なファクターであることは間違いありません。

上記の相場観の足し引きに加え、上場したらどれくらいの時価総額になるか、そこから逆算して投資家として許容範囲なのかどうか?ということも、時価総額の決定に影響してくると思います。

つまり、スタートアップの時価総額は、会社が将来どんだけ世の中の役に立つかの期待と不安をあらわす経済価値と言えます。